なんだか最近、お尻から太ももの裏にかけてピリピリ、ジンジンとした痛みが走る…
その症状は坐骨神経痛かもしれません。
日本人の多くが経験すると言われる坐骨神経痛は、日常生活に支障をきたすほどの辛い痛みや痺れを伴うことがあります。
一般的に軽度の坐骨神経痛は1〜2ヵ月で自然に改善する可能性がありますが、自然に治ったとしても再発する可能性があり、症状が進むと慢性的に坐骨神経痛が発生してしまいます。
今回は、そんな坐骨神経痛の原因、よくある症状、そして自分でできる簡単な対処法について解説していきます。
坐骨神経痛とは?
坐骨神経痛は「病名」ではなく、「症状の総称」です。
坐骨神経という腰から足にかけて伸びる、人体の中で最も太く長い神経が、何らかの理由で圧迫・炎症・圧迫されたり、刺激されたりすることで、お尻や太ももの裏、ふくらはぎ、足先にかけて痛みや痺れが生じる状態を坐骨神経痛と呼びます。
病名ではなく、あくまで症状の名称です。
坐骨神経痛を引き起こす原因は様々で
・椎間板ヘルニア:腰椎の間にある椎間板が飛び出し神経を圧迫
・梨状筋症候群:お尻の奥にある筋肉(梨状筋)が坐骨神経を締めつける
・脊柱管狭窄症:神経の通り道が狭くなって圧迫
・外傷やがん、糖尿病性神経障害など
などが挙げられます。
長時間のデスクワークや立ち仕事、不自然な姿勢、運動不足、加齢などがこれらの原因を引き起こすリスクを高めると言われています。
基本的には、腰・股関節・脚をケアすることで、痛みの緩和がみられます。
坐骨神経痛のよくある症状
坐骨神経痛の症状は人によって様々ですが、一般的には以下のような症状が現れます。
・お尻から太ももの裏、ふくらはぎ、足先にかけての痛み
・ピリピリ、ジンジンとした痺れ
・安静にしている時でも感じる痛み
・長時間座ったり、立ったりすることで症状が悪化する
・咳やくしゃみで痛みが響く
・足に力が入りにくい、感覚が鈍い
これらの症状が一つでも当てはまる場合は、坐骨神経痛の可能性があります。
少しでも違和感が出てきた場合、まずはセルフケアで様子をみましょう。
【急性期は「安静+冷却」】
発症から72時間以内は、冷湿布や保冷剤を用いて神経周囲の炎症を鎮めるのが第一無理なストレッチや入浴は悪化を招く場合も炎症を抑える
【回復期以降:動かして血流UP】
痛みが少し落ち着いたら、長時間の座位を避けてこまめに体を動かす
骨盤や股関節周囲を整えるストレッチを取り入れる
【姿勢・生活習慣の見直し】
猫背や反り腰は腰椎に神経圧迫を強めるため、姿勢の見直し
椅子の高さ、PC作業の環境を調整する、こまめな休憩など自分の習慣に取り入れる
坐骨神経痛は、自分で改善できるの?
軽度〜中等度の坐骨神経痛であれば、自分で改善できる可能性は十分にあります。
ただし、痛みの程度や慢性化の有無によって、医療機関での受診がいい判断の場合もあるため、自分の状態をきちんと分析することが大切です。
分類 | 自力改善が可能 | 医療介入が必要 |
---|---|---|
痛みの範囲 | お尻・太もも止まり | 足首〜足指にしびれがある |
持続時間 | 数日〜1週間以内に改善傾向 | 2週間以上変化なし・悪化 |
日常生活 | 歩ける・座れるが違和感あり | 座れない・歩行困難 |
感覚異常 | なし・軽度 | 感覚がない、脱力 |
「感覚がなくなる」「力が入らない」など神経麻痺の兆候がある場合は受診をしてください。
以下のような場合は自己判断せずに、より深刻な原因が隠れている可能性があるため、早めに医療機関を受診しましょう。
- 我慢できないほどの強い痛みがある
- 足の麻痺やしびれが進行している
- 排便や排尿に異常がある
- 症状が改善するどころか悪化している
2020年に発表された
4か月以上持続する坐骨神経痛に対して、手術・非手術療法は効果を調査した研究があります。患者を以下の2群に無作為に手術群と非手術群に割りあて
評価項目:6か月後の脚の痛みの強度(視覚的アナログスケール:0〜10)
副次評価項目:Oswestry Disability Index(ODI)、背部および脚の痛み、生活の質のスコア(6週間、3か月、6か月、1年時点)
結果
手術群:6か月後の脚の痛みの平均スコアは2.8
非手術群:6か月後の脚の痛みの平均スコアは5.2
統計的差異:両群間の平均差は2.4(95%信頼区間:1.4〜3.4、P<0.001)であり、手術群が有意に優れていました。
副次評価項目:ODIスコアや12か月後の痛みは手術群・非手術群で改善が見られました。手術関連の有害事象:手術に関連する有害事象は9例報告され、そのうち1例は再発性椎間板ヘルニアに対する再手術が行われました。この研究は、4か月以上持続する坐骨神経痛に対して、マイクロディスケクトミーが非手術的治療よりも脚の痛みの軽減において有効であることを示しています。特に、6か月後の評価で有意な差が認められ、1年後もその効果が持続していました。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32187469 Surgery versus Conservative Care for Persistent Sciatica Lasting 4 to 12 Months
保存療法を受けた患者でも、6か月以内に一定の改善を示す例がみられたため、坐骨神経痛の多くは、時間の経過とともに自然に軽快していく傾向が考えられます。
この研究でも、手術を受けなかった患者が完全に回復する例や、痛みの程度が大きく減少した例が報告されているため、 症状が重度でなければ、まずは保存療法を6か月試みることもひとつの対処案だと思います。
この研究からは、手術がより早期の症状改善につながる可能性がある一方で、非手術群にも自然治癒、手術のリスクや術後の合併症を避けられる、など複数のメリットもあります。
坐骨神経痛をゆるめるセルフケア
坐骨神経痛の痛みに関係する主な筋肉は、背中下部から太ももにかけての股関節屈筋と梨状筋です。
これらの筋肉を優しく伸ばし、凝り固まった腰と臀部、太もも等の筋肉をほぐす意識をしましょう。
【梨状筋ストレッチ】
坐骨神経は、お尻の深部にある梨状筋(りじょうきん)という筋肉の下を通過しています。
この筋肉が硬くなると、坐骨神経が圧迫されて痛みやしびれを引き起こすことがあり、梨状筋の緊張を緩めることで神経の圧迫を軽減させます。
ストレッチ
・仰向けに寝る
・右足首を左膝に乗せる(数字の4のような形)
・左太ももを両手で抱えて胸に近づける
・お尻(右側)が伸びているのを感じながら30秒キープ ※左右入れ替えて行う
【ハムストリングス(太もも裏)ストレッチ】
坐骨神経は、お尻〜太ももの裏〜ふくらはぎを通っているため、ハムストリングスが硬いと神経が引っ張られやすくなり、痛みを誘発します。筋肉の柔軟性を高めることで、神経へのストレスを減らします。
・仰向けになる
・片脚を天井に向かって持ち上げ、もう片脚は床に伸ばす
・膝をなるべく伸ばしたまま30秒キープ(タオルなどで補助してもOK)
【脊柱のモビリティエクササイズ】
背骨や骨盤の動きが悪くなると、周囲の筋肉が過緊張を起こし、坐骨神経を圧迫しやすくなります。この動きで背骨と骨盤の連動を回復させることが、神経の通り道をスムーズにし、痛みを和らげることに繋がります。
エクササイズ(キャット&カウ)
・四つんばいの姿勢になる
・息を吸いながら背中を反らし、頭とお尻を上げる(カウ)
・息を吐きながら背中を丸め、あごを引いておへそを見る(キャット) ※ゆっくり10回繰り返す
脊柱〜骨盤の可動性改善、神経の滑走性が向上し、坐骨神経への刺激が軽減を促します。
【骨盤のゆらしエクササイズ】
骨盤が歪んだりロックしたりすると、坐骨神経の出口となる部分が狭くなりやすいです。日常の中で少しずつ骨盤をゆるめる動きが、神経圧迫の予防になります。
・椅子に浅く腰かけて、足裏を地面につける
・骨盤を前後にゆっくり「前傾・後傾」と動かす(反る/丸める) ※ゆっくり10〜20回行う
慣れてきたら左右に小さく動かすのもOK!
骨盤周囲の緊張が解け、坐骨神経が圧迫されにくくなり、座りすぎによる「圧迫疲労」を軽減します。
セルフケアの注意点
痛みが強くなる動きは無理に行わないようにしましょう。
ゆっくり呼吸をしながら行うことで副交感神経が優位になり、痛みが緩和しやすくなります。
坐骨神経痛のセルフケアは、「神経が通る筋肉の柔軟性を上げる」「神経が滑らかに動く空間を整える」ことがポイントです。
1回で変化を感じなくても、毎日5〜10分でも継続することが大切です。
まとめ
自力で坐骨神経痛を改善するには、「これは自分でケアしてよい痛みか?」の見極めが大切です。
我慢できないほどの強い痛みがある、足の麻痺やしびれが進行している症状の場合は、専門家に相談しましょう。
一般的に、軽度の段階でセルフケアによって痛みを軽減することは可能ですが、継続的な姿勢・運動・生活習慣の見直しなど自分を分析する必要があります。
症状に不安があるときは、我慢せず専門家に相談しながら、セルフケアと医療のバランスをとることが大切です。